利欲と感情(4)董其昌の酒徳頌から

4.肌を刺す寒暑

酒徳頌巻 董其昌 祥香臨

不覺寒暑之
 切肌
利欲之感
 
読み下し文は、「寒暑の肌に切に、利欲の情に感ずるを覺(おぼ)えず。

「不覺」:感じない。
「寒暑之切肌」:寒暑が肌を刺す。
「利欲之感情」:利欲によって心が動かされる。*①

現代語にすると、「肌を刺すほどの寒さや暑さにも、利欲にも心が動かされることがない。」

大人先生は、音すら耳に入らず、目を凝らしてじっと見ても見えず、寒さにも暑さにも感じないわけです。

出典:*① 漢詩と名蹟 鷲野正明 二玄社