利欲と感情(3)董其昌の酒徳頌から

3.目をこらしても

酒徳頌巻 董其昌 祥香臨

熟視
 不覩泰山之形


読み下し文は、「熟視(じゅくし)すれども泰山の形を覩(み)ず」
「塾視」:目を凝らして見る。
「不覩」:目に入らない。「覩」は「睹」の古字。

「泰山之形」:泰山のすがた
 「泰山」とは、山東省泰安市の北にあり標高は1524mで世界遺産。中国五岳のひとつ。五岳とは、泰山(東岳)、華山(西岳)、衡山(南岳)、恒山(北岳)と嵩山(中岳)。

昔、天子が即位後、この山に登って封禅(ほうぜん)の祭りを行いました。「封」は土を積んで壇を造り天を祭ること。「禅」は地をはらって山川を祭ること。[管子、封禅]

また、死者の集まる山とも言われ、仏典では地獄のことを太山と呼ぶことがあります。泰山は、太山、太岳とも呼ばれます。

現代語にすると、目を凝らしても泰山のすがたすら目に入らない。
大人先生には中国の名山のひとつである、泰山の山容すらも目にはいらないのです。

参考文献:漢詩と名蹟 鷲野正明 二玄社
     新漢語林 大修館書店