利欲と感情(5)董其昌の酒徳頌から

5.般若心経の一節

酒徳頌巻 董其昌 祥香臨

先の大人先生の様子を読み、般若心経の一節を思い出しました。その中に、「無眼耳鼻舌身意。無色聲香味触法」とあります。

心経では、この一節に、「仏教の世界観と物語る『三科の法門』・・すなわち『一切は空なり』ということを反芻して説いたものであります。」*①

つまり世の中の全てのことは縁によって起きることで、執着するものは何もない、ということです。

大人先生は、どうもお酒にはご執心らしいのですが、それとても「うっとりとして酔い、からりと醒める」わけです。自分の欲に動かされたままであるということではなさそうです。

利欲によって心が動かされるのは、それに執着があるからでしょう。そうしたいと願い、そうでなければどうにもならないと考えれば、とらわれの身になってしまいます。

 出典:*① 般若心経講義 高神覚昇 角川書店