春の尽きるころ朗詠したい(1)和漢朗詠集より

1.春を引きとめようと

釈文:「留春々不住帰人寂漠。厭風々不定、風起花蕭索」
書き下し文は「春を留むるに春住まらず 春帰って人寂漠たり 風を厭ふに風定まらず 風起って花蕭索たり」

鑑賞:「寂漠」声がなく静かなさま「蕭索」ものが散じて寂しいさま。「花」桃・梨の花。

現代語にすると「春を引きとめようとしても、春はとどまってはいない。春は帰っていってしまい、残された人は寂しさに声も立てずにいる。花を散らす風をイヤだと思っても、風は静まらない。風に吹かれて桃や梨の花びらがはらはらと舞い、いっそう寂しさを感じる。」

参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫