自然のいとなみを詠う(5)建礼門院右京大夫集から

5.古き池の杜若

建礼門院右京大夫集  祥香書

「古い池の杜若」の題で詠みます。

 「あせにけるすがたの池のかきつばた
  いく昔をか へだてきぬらむ」

選字を「あせに希る須可多の池農か支
  川盤多いく牟可し越可へ
    多傳きぬら无」

「あす」は浅くなるの意味。「すがたの池」は奈良県大和郡山市筒井町にある池で、杜若の名所、歌枕です。浅くなってしまったすがた池の杜若は、どれくらい年を経ているのだろうか。*①

自然の営みに目を留めて、歌を詠む姿勢が宮人の情趣を感じさせます。そして、自然詠のみならず、時のうつろいにも心を寄せています。

 *出典:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社