俊成卿女家集を書いて背景を読む(6)-四十二番-

6.本歌との比較
「月への接近」本歌「大方は・・・」は月を理知的に捉え、概念的である。俊成卿女の「払ひかね・・・」は情緒的に月を見ている。

「積もると老」本歌は月が積もると老いるのだから、私は愛でない、と月を突っぱねている。俊成卿女の歌はそこで拒否するのではなく、涙のヴェールで場面をぐっと絵画的な展開へと誘う。

月を見ようと涙を拭っても曇ってしまう、老いの切なさと抗うことのできない寂寥感が全体を覆う。本歌取りの鮮やかな場面の変化を雲と見せながら、涙へ帰着させる手腕はさすがである。

参考文献:平安鎌倉私家集 久松潜一校注 岩波書店