俊成卿女家集を本歌と一緒に楽しむ(2)-三十八番-
2.俊成卿女の歌との対比と新しさ
対比1:「袖の香の昔とだにも忘れにし花橘の猶(なほ)にほふらむ」は時が経ちすぎて、あの方の袖の香りさえ思い出せない、昔のことはすでに忘れていた、と詠んでいる。
対比2:人の心の変化と変わらぬ自然
自分はあれほど大切に思っていた昔の思い出を忘れてしまった、それに対して花橘は「猶にほふらむ」(相変わらず香っているのだろう)
鑑賞:本歌は橘の香りをかいで思い出したという、いわば受動的な歌である。それに対して俊成卿女の歌は現実に匂っているわけではないが、想像して詠んでいる。
自らの忘却に寂しさを覚え、花橘の香りを想像する、自分の孤独な気持ちに触れた心理が詠まれて新鮮味がある。
選字は「袖の香能無可しと多にも王春れ二志 者那多遅は奈の難本爾ほ布ら无」
参考文献:平安鎌倉私家集 久松潜一校注 岩波書店


