俊成卿女家集を本歌と一緒に楽しむ(1)-三十八番-

1.袖の香の
釈文:「袖の香の昔とだにも忘れにし花橘の猶にほふらむ」

鑑賞:「袖の香」を詠んだ歌の中でこの歌の本歌はよく知られた
「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」『古今集』(よみ人知らず)

これは初夏に咲く橘の花の香りをかぐと、昔なじんだ懐かしい人の袖に染み込んだ香りがする、という意味である。

語釈:「袖の香」平安時代は衣に芳しい香りをたきしめる習慣があって、衣の袖は親密は人を表している。

背景:匂いによって過去の記憶や恋人を思い出す「懐旧の情」を鮮やかに表現した歌として、後世の『伊勢物語』などにも引き継がれた。

参考文献:平安鎌倉私家集 久松潜一校注 岩波書店