山のあなたに(6)和泉式部日記より

6.よろづのことは
釈文:「よろづのことはただ御乳母のみこそすなれ、顕証(けそう)にて出でひろめかばこそはあらめ、さるべき隠れなどにあらんには、なでうことかあらん」

選字は「よろ徒農こ度者多ヽ御乳母 乃三故須奈連顕証爾て出傳日ろめ可はこ所 者阿ら免沙る遍き可久れ奈と耳あ羅无爾八 なてう許と可あら无」

鑑賞:「顕証」ケンショウの直音化ケンソウのンを表記しない形 あらわなこと。きわだったこと。「隠れ」人目につかないところ。

大意は「大方のことは御乳母がされるだろう。きわだって大きな顔をしていたらどうかわからないけれど、どこか人目につかない場所にいれば、どうということもないだろう。」
女は宮様の邸へ住まうことにかたむいているようだ。

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社