さっぱりとして欲が無く(1)五言律詩を書く

1.晩に故郷へ帰る

晩歸故園二首 祥香書

「晩歸故園二首」は俗世を離れ、故郷に帰り無欲な暮らしをしていることを詠んでいます。
作者、李頎(りき)は唐の人で、生没年は不詳。開元二十三年(735)の進士。
新郷県の尉(警察・軍事等に関する官)となりましたが、俗世間を避け仙術を研究したと
いうことです。

この漢詩を唐の王鐸(1592〜1652)が書作しています。王鐸は明末清初の書家・画家で
字は覚斯。明・清の二朝に仕えました。書法に名高く『書法の始めは帖に入ることが難し
く、次に難しいのは帖から出ることだ』と言います。

書作に際し、一日は帖を臨書し、翌日は自らの書作をすることを終生、続けたと言われます。感情に富む自由奔放な作風で知られ、現在も人気の高い作家です。作品は、縦長三行書ですが、今回は王鐸に倣いながら五行書としました。

 参考文献:漢詩と名蹟 鷲野正明著 二玄社