あの人はどこでこの月を眺めているのだろうか(3)建礼門院右京大夫集を書きながら

3.言いようのない気持ちで

建礼門院右京大夫集 祥香書

作者は言いようのない気持ちにこのまま耐えていけるだろうか、と思います。
詞書:「いはむかたなき心ちにて、秋深くなりゆくけしきに、ましてたへて
    あるべき心ちもせず。」

選字は、「い者む可た奈き心ち耳天秋布可
     久難利ゆ久希志支に万して多へ
     てあ流遍き心遅せ須」

大意は、言うことができないほど辛い心地でいると、秋が深くなる景色に、耐えて
生きていける気がしないのです。

鑑賞:「秋深くなりゆくけしきに」では、つらく悲しいのに、の意が言外に込めら
    れています。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社