母の四十九日忌に(1)建礼門院右京大夫集より

1.母は夕霧

建礼門院右京大夫集 祥香書

作者の母は夕霧。世尊寺家系で箏の名手でした。すでに尼となって仏門修行をしていましたが、

 詞書「母なる人の、様かへて失せにしが、ことに心ざし深くて、人にも言ひ置きなどせられし。
    五月のはじめなくなりにしのちは、よろづ思ふはかりなくて明かし暮らししに」

 選字は、「母なる人の様可遍て失せにし可こと爾
      こヽろ佐し深久て人爾も言ひ置き奈
      と勢られ志五月のはし免二奈久那里
      
      耳志の遅者夜ろ徒おもふ者可梨奈
      久て明かし暮志ヽ爾」

現代語にすると、「母は尼僧になって亡くなったが、とりわけ信仰心が厚く、自分が亡くなった後のこと
        の遺言などをされていました。5月の初めに死去してからは、全てにおいて物を考える
        目当てもなく、日を過ごしておりました。」

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社