藤の花房が美しい季節に(1)和漢朗詠集を臨書して

1.白氏文集から

粘葉本和漢朗詠集 祥香臨

この季節には、白居易の慈恩寺の漢詩を朗詠したくなる方もおられるでしょう。
「眺望慈恩三月尽、紫藤花落鳥関々」

書き下し文は、「眺望す慈恩に三月の尽きぬることを
        紫藤の花落ちて鳥関々たり」

現代語訳は、「長安の暮春、その中でも慈恩寺の三月尽を思うと心が痛みます。
       紫の藤の花も落ち、鳥だけがむなしく鳴きかわしていることでしょう。

この句は朗詠中の名句の一つで、古来詩の句題となっています。源順の詩序にも、
この詩が愛誦されていたことがわかります。

 参考文献:和漢朗詠集 川口久雄 講談社学術文庫