思い人とのはかない別れ(2)建礼門院右京大夫集から

2.山里のあさがほ

建礼門院右京大夫集 祥香書

資盛との思い出のもう一つは、あさがほの咲く山里。
「山里なるところにありしをり、艶なる有明に起き出でて、まへちかき透垣に咲きたりしあさがほを、『ただ時のものさかりにこそあはれなれ』とて見しこともただいまの心地するを」

選字は、「や万佐となるところにあ利志乎り盈ん
     なるあ利阿爾遣於き出弖ヽま遍ち可
     支すい可きにさ支多り志あ佐か本乎
 
     たヽと支の万能さ可利(に)こ曽阿盤連なれ
     とて見しこ登毛多ヽいまの心地春るを」

大意は、山里のあたりにいた時、情趣が感じられる明け方に起き出て、透かしのある垣根に咲いた朝顔を見て、わずかな間の花のさかりが、しみじみと感じられますと昔の歌を口ずさんだことも、ついこの間のことのように思われます。

朝顔のひとときのさかりを、しみじみと感じられたのが懐かしく思われるのでしょう。
 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社