生まれたての春は(3)和漢朗詠集より

3.柳が新芽を出した姿は

粘葉本和漢朗詠集 二玄社 祥香臨

 今回は「早春」の項からです。
氷消田地蘆錐短 春入枝條柳眼低」元

読み下し文は「氷田地に消えて蘆錐短し 
       春枝条に入って柳眼低(た)れり」

「蘆錐」は蘆が水辺の砂を破って芽を出したすがたを錐の尖端にたとえ、「柳眼」は柳が新芽を出したすがたを、美人の眼にたとえている。*①

意味:早春に田の氷は解けて消え、錐の先のような蘆が短く出ています。
柳の枝は、美人の目のような新芽をふいて下を向いています。

どちらもまだ早い春の情景を写して、穏やかです。
出典:和漢朗詠集 川口久雄 講談社