昔の手紙を整理していると(3)建礼門院右京大夫集を書きながら

3.宮中から遠のいて

建礼門院右京大夫集 祥香書

「雲の上もかけはなれ、そののちもなほときどきおとづれし人をも、
 たのむとしはなけれど、さすがに武蔵鎧とかやにて過ぐるに、なか
 なかあぢきなきことのみまされば」

選字は、「雲の上もか希者難連曽のヽ遅毛
     なほときゝゝ於とつ連志人をもたの
     むとしハなけ連登さ須可爾武蔵

     鎧と可や爾て過久流二奈可ヽヽあ地支
     なきこ登のみ万佐連者」

鑑賞:「武蔵鐙」とは昔、武蔵国で製作された鐙。紋様入りの一枚鉄を用いたもので、儀式用のほか、一般に普及しました。伊勢物語に「武蔵鐙さすがにかけて頼むにはとはぬもつらしとふもうるさし」とあることから引用されています。

訪ねてくれるのはつらくて恨めしい、かといって来れば煩わしいということを示し、どっちつかずの心情を表しています。
 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社