西行筆と伝えられる山家心中集は(10)臨書して

10.数ならぬ

山家心中集 伝西行 祥香臨

釈文:「かずならぬ心のとかになしはてヽ
    しらせてこそは身をはもうらみめ」

用字は、「可す奈らぬ心のと可爾なし八てヽ志
     らせてこ曽八みを波毛うらみ免」

鑑賞:「可す奈」の「奈」に注目したい。この場合、「奈」ではなく、「な」を選ぶこともできたが、左右に点を打つことで懐の大きい字形となった。

また、「ぬ」を横に広げた下に「心」を小さめにそっと置き、感じとかなの調和を図っている。二行めの「波」は一行めの余白へ働きかけて引き締まった空間を形成している。

参考文献:山家心中集 伝西行 二玄社