金沢本万葉集巻ニ(1)国宝を臨書して

国宝 三の丸尚蔵館蔵 金沢本万葉集 藤原定信筆 祥香臨

1.金沢本とは

金沢藩主前田家に伝来したことにちなみ、この名で呼ばれる昨年国宝に指定された古筆である。三の丸尚蔵館に所蔵されている『万葉集』巻第二である。

伝来については、宝永四年(1707)仲春、第五代藩主綱紀が記している。それによれば、祖父利常(第三代藩主)の遺愛の品であること、漢字と仮名を交えて書された稀代の好著であるが、一部の欠損が惜しいことが書かれている。

利常、綱紀が共に文芸に深い関心を持ち、文人と交流し、工芸技術者を保護したが、自らも優れた作品を蒐集した。

参考文献:書の美、文字の巧 三の丸尚蔵館展覧会図録