資盛の邸跡に虫の声が(1)建礼門院右京大夫集から

1.二人で柳桜を植えたこと

建礼門院右京大夫集 祥香書

北山の邸の庭には二人で植えた柳桜が残っています。
釈文:「東の庭に、柳桜のおなじたけなるをまぜて、あまた植ゑ並べたりしを、
    ひととせの春、もろともに見しことも、ただ今の心ちするに、梢ばかり
    はさながらあるも、心憂くかなしくて」

選字は、「東の庭二柳桜のお那し多介奈流を万せ
     弖あまたうゑ奈らへ堂利越日登ヽ
     勢農者類もろと裳に見志こと毛たヽ今

     能心遅する爾梢者可り盤佐奈可羅ある毛
     こヽ路う久か奈し久天」

大意は、「東側の庭に柳と桜を高さを揃えて二人で植えたものを、たくさん並べ、
     ある年の春にお花見をしたこともついこの間のことような気がします。
     その時の梢が今もそのままあるのも、つらく悲しくて」

鑑賞:「見渡せば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける」『古今集』所収、素性
    が詠んだ一句で、見渡すと柳の緑と桜の花の色が混じり合い、都はまさ
    に春の錦となっています、の意味です。

    その歌を想ってか二人で植えた柳桜が形見のように佇んでいます。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社