翼がないのに自然にまかせて飛ぶとは(3)荘子より

3.天の世界の仕事では

荘子 祥香書

「為人使易以偽
 為天使難以偽聞以有翼飛者矣未
 聞以无翼飛者也聞以有知知者矣未
 聞以无知知者也」

書き下し文は、「人の使と為れば偽を以し易く、天の使と為れば偽を以し難し。
有翼を以て飛ぶ者を聞くも、未だ無翼を以て飛ぶ者を聞かざるなり。有知を以て
知る者を聞くも、未だ無知を以て知る者を聞かざるなり。

訳すと、「人間の世界の事なら偽ることもたやすいが、天の世界の事では
難しい。しかしながら世の中では、わがはからいの翼を働かせて飛ぶ者の話は多
いけれども、翼が無く飛ぶ者の話は聞かない。

利口ぶった知恵を働かせて物事を知る者は多いが、知恵を離れて自然に物事の道理
を十分に理解する者のことは聞かない。

この場合、翼が表しているのは、自然ではない、わざとらしい知恵でしょう。
 参考文献:荘子 金谷治訳注 岩波文庫