紅葉のつくり葉・夜の月(3)建礼門院右京大夫集を書く

3.おかえりの夜

建礼門院右京大夫集 祥香書

平清盛が祖父正盛以来の六波羅の屋敷を大いに拡張した頃のことです。西は賀茂川の辺りから、南は正面通りに及ぶ2.2キロ四方の広大な面積を占めました。

 詞書:「宮の、六波羅殿にしばし出でさせ給ひて、いらせ給ひし行啓の出車にまゐりたりし人の、その夜の月おもしろかりしを、」

選字は、「宮の六波羅殿爾し者志出て
     佐せ多まひていらせ給飛し行啓の

     出車にまゐ利多り志人の曽の夜
     乃月於もしろ可里しを」

大意は、中宮様が六波羅のお屋敷に短く滞在されてから、お帰りになる時、お供をした女房が、その夜の月が大層美しかったと」

清盛公の隆盛ぶりがうかがえるほど、ご立派なお屋敷の改築ですね。権勢を誇るにふさわしい建築なのでしょう。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社