良寛さんの書「天上大風」(5)

5. 良寛さんの風

良寛書   祥香臨

良寛は「天上大風」のほかにも風にまつわる句や歌を読んでいます。
 「たくほどは風がもてくる落葉かな」
 「わが宿に植ゑて育てし百くさは風の心に任すなりけり」

この「風」は何を示しているのでしょうか。
良寛は禅の曹洞宗の僧侶であり印可を受けています。「碧巌録」は禅の教科書とも言われる書物ですが、その中に「風」に関連のある一節があります。

「僧雲門に問う、樹凋み葉落ちる時如何。雲門云わく、体露全風」

雲門は雲門宗の祖・雲門文偃、体は仏の体、露は全て丸出しに現れる。金は五行の一つ、
方位では西、季節では秋にあたる。雲門は、秋風の中に仏法の全体が露現しつくしているという。*①

また、同じく「碧眼録」第六則 雲門十五日、の中で
本則 「誰家無明月清風」と述べて
注として、「万人に具わる清浄法身の喩え」*②とあります。

いずれも「風」を自然のありようを示す「法」であると述べています。
良寛もそのままに現れている仏身の様を身近な「風」と表しました。平易な言葉の中にも
真があることを、お示しになっています。
          
            *出典:① 良寛の名品百選 加藤僖一
                ② 碧巌録  岩波文庫