良寛さんの書「天上大風」(4)

4.自叙帖も臨書していた良寛

自叙帖 懐素 二玄社  祥香臨

良寛は、懐素の「自叙帖」も臨書していたことが知られています。
懐素は張旭とともに、「張顚素狂」と称され、狂草で知られた僧侶です。二人は共に酒酔に乗じて奔放に書作しました。長沙に居住し、草書の天才として評判が高かったのです。

上記の釈文は「懐素、長沙に家す。幼にして仏に事え、経禅の暇、頗る筆翰を好む。」

日本語訳:懐素、長沙に住居し、少年の頃より仏に帰依し、経を読んだり参禅の余暇に、大いに文筆のことが好きであった。*①

懐素は、古法をよく学び、古方から脱して草書三昧の妙境に達したと言われています。*②
臨書によって、懐素の真髄を表すことは難しいのですが、自由な筆遣いと、とらわれのない心情が伝わってくるようです。

懐素の用筆は直筆で滞りがなく、連綿として続いていくさまには勢いがあります。
良寛の書においても、素直で平明な運筆は、見るものを清澄な気持ちにさせてくれます。二人とも同じように僧侶であった点も共通するところです。

次回は、「天上大風」と書した良寛の気持ちに迫ってみましょう。

                 *出典:① 墨場必携
                     ② 自叙帖 懐素 二玄社