こんな時こそ「愛語」(1)

1.良寛さんが書いた「愛語」

正法眼蔵 道元禅師 良寛書  祥香臨

言葉は、人の心に寄り添う優しい春の風である時も、荒れ狂う暴風のように激しく迫る時もあります。それは、いかようにもその人によって、変わるのではないでしょうか。

上の「愛語」は、曹洞宗を開かれた道元禅師の代表的書物「正法眼蔵」の「菩提薩埵四攝法」巻の「愛語」部分を良寛が書き写したものを臨書したものです。四攝法とは、一に布施、二に愛語、三に利行、四に同時と説かれています。

良寛は、師匠の国仙和尚を通じて、道元禅師が著された「正法眼蔵」を教えられました。
道元禅師を大変に尊敬し、「正法眼蔵」に感涙したと言われています。

原文:ヨロコバシメ、コゝロヲ楽シクス、向カハズシテ
   愛語ヲキクハ、肝ニ銘ジ、魂ニ銘ズ。シル
   ベシ、愛語ハ愛心ヨリオコル、愛心ハ慈

   心ヲ種子トセリ。愛語ヨク廻天ノ力ラ
   アルコトヲ學スベキナリ。タゞ能ヲ賞ス
   ルノミニアラズ。 *①

「愛語」は、「愛心」より起こり、「愛心」は「慈心」を種子としている、ということです。相手を思いやる心が、言葉となって表れるのです。

            *出典:① 良寛の名品百選  加藤僖一編著