俊成卿女家集を書いて味あう(22)-月花五十首を-

22.深まりゆく秋
鑑賞:素性法師の「今来むと いひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな」は、あの人がすぐに行くと言ったばかりに、秋の長い夜をじっと待ち続けて、とうとう有明の月が出てきてしまった。待ち人の来ない恋の嘆きを歌にしている。

一方、俊成卿女の「長月の有明け方の空の月心ぼそくぞ傾きにける」は旧暦9月の深まり行く秋に物寂しさを感じて眺める月が傾き、その思いは去ってゆく秋と消えゆく月がリンクしてわびしさがつのる。

このように俊成卿女は「恋」という個人の感情から、自然に想いを託して切なさが一層ましてゆく様を詠んでいる。

参考文献:平安鎌倉私家集 久松潜一校注 岩波書店