撰者の定家より書き置いた歌を問われて(1)建礼門院右京大夫集から

1.老いてのち

釈文:「老いののち、民部卿定家の、歌をあつむることありとて、『書きた置きたる物や』とたづねられたるだにも」

選字は「老いの遅民部卿定家能歌を阿つ無 ることあ里登天可記置支多類もの やと多徒年られ多る堂耳毛」

鑑賞:「民部卿定家」藤原定家。民部省の長官。
「歌をあつむる」は『新勅撰集』編集のための資料収集。撰進の命が下されたのは貞永元年(1232)六月、定家が民部卿辞任後五年経ていた。すでに権中納言であった定家の任官を知らずに記したか、昔の官名を書いたかは不明である。

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社