西行の一品経和歌懐紙を臨書して(3)その澄んだ線は

3.西行の真跡は

国宝 一品経和歌懐紙 西行筆 祥香臨

西行筆と伝えられている書は、あるけれども真筆と確認されたものは数少ない。その中でも、この「一品経和歌懐紙」と「仮名消息」(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)は真蹟であると認められている。

一見して、その緩みのない澄んだ線は心があらわれる思いがする。さらに臨書では、運腕の大らかさが極めて細い線にまで行き届いているのがわかる。

書作年は1182年頃と推定されることから、齢65歳頃となる。平家の都落ちに伴う東大寺消失の復興のために高僧重源の依頼を受け、奥州へ向かう三年前であった。

参考文献:山家心中集 伝西行 二玄社