元永本古今集を臨書して(3)春歌上から

3.素性法師の歌

国宝 古今和歌集(元永本) 藤原定実筆 祥香臨 

釈文:「見わたせば 柳桜をこきまぜて
    宮こぞ春の錦なりける」

選字は「美わ多世八柳桜を古支末勢て
    見やこ曽は留の耳し支な
    李介流」

鑑賞:『元永本古今集』は漢字とかなとの調和が美しいことで知られているが、「柳桜」はまさにその良い例と言える。「柳」も「桜」も木偏であるので強弱をつけるのが難しい。

それを「柳」を細く大きめに懐深く置き、「桜」は旁を墨量豊かに小さく収めてバランスが良い。そうかと思えば、「耳」に続けて「し」を書き前の行との対比が見事である。

参考文献:書の美 島谷弘幸著 毎日新聞社