石山切から書と工芸の調和をみる(3)伊勢集より

3.はまちどり

石山切 祥香臨 東京国立博物館蔵

返しとして
釈文:「はまちどりつばさのなきをとぶからに
    雲路にいかで思ひかくらん」

選字:「者万遅と利つ者佐のな支越と婦可に
    久もち爾い可て於もひ可倶ら无」

鑑賞:「者」から字の向きを変えがら「遅」へと広がりを見せる。「佐」で右へ働きかけて、余白へ効いている。「婦」が絶妙な位置に配されている。

終句でははなちがきでリズムを変えて、「ら无」は思い切って伸ばして収めている。

参考文献:書の美 島谷弘幸著 毎日新聞社