石山切から書と工芸の調和をみる(2)伊勢集より

2.大空に

石山切 祥香臨 東京国立博物館蔵

釈文:「おほぞらにとふてふことのかたければ
    雲の上にぞさしてきこゆる」

選字は「於ほ所らにと婦てふと能かた希礼八
    雲能上爾楚さしてきこゆ類」

鑑賞:連綿が流麗で自然である。始まりは「於」が大きく懐深く、下の「ほ」をかかえるように配字し「所」の終画は右へ張り出して調和をとっている。

「婦」はこの歌の中で見せ場となるよう字幅とり、墨が入る点が印象的である。二行めの「雲」は小さめでありながら、墨をしっかりとついでいる。

参考文献:書と美 島谷弘幸著 毎日新聞社