かなしという言葉は(1)建礼門院右京大夫集を書いて

1.命には限りがあると

建礼門院右京大夫集 祥香書

言いようのない嘆きの中で、作者は
 「ただ『かぎりある命にてはかなく』など聞きしことをだにこそ、
  かなしきことにいひ思へ、これは、なにをかためしにせむと、か
  へすがへすおぼえて」

選字は、「多ヽか支りあ流命爾て者可那具
     なと聞きしこ登を多耳こ所
     か奈し支ことにい日遍これ者奈二

     越可多免志爾勢无と可へ春か遍寸
     お本盈弖」

大意は、「ただ『命は限りがあるものだから』などと聞いた場合でさえ、
     世間では悲しいことと言っているので、今回のことは、何を
     例としたものかと、つくづくと思えて」

 寿命を全うした方でさえ、かなしいと言うのに、今回のことでは未だ
 現実のことは思えないほどの作者は、世間の人の「かなしさ」に疑問
 を投げかけています。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社