うっそうと木が繁る部屋から(4)建礼門院右京大夫集を書いて

4.沖つ波は

祥香書

沖つ波 かへれば音は せしものを
 いかなる袖の 浦によるらむ


選字は、「沖つ波可遍れ者音盤せし毛の越
     い可那る袖のう羅耳よ流ら無」

鑑賞:「沖つ波」は沖に立つ波。「かへる」を導く序の詞。
   「袖の浦」涙にぬれた袖を浦に見立てて言う語。小大君集に「わが身こそ心にしみて袖の
    浦のひる時もなくあはれなれ」があります。
   「袖」は他の女性をにおわせている。

歌意は、以前は、お帰りになればお便りがあったのに、どなたか他の人に送っておられるのでしょうか。

重層的に言葉を掛けて、次の言葉をつむぎながら、視覚のみならず、「波」「音」によって聴覚にも働きかけてきます。
 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社