うっそうと木が繁る部屋から(5)建礼門院右京大夫集を書いて

5.冬も葉が落ちない

祥香書

作者の気が滅入るのは、便りがないばかりでなく部屋から見える景色も関係しているようです。
 「つねに向ひたる方は、常葉木ども木暗う、森のやうにて、空もあきらかに見えぬも、なぐさ
  むかたなし

ながむべき 空もさだかに 見えぬまで
しげきなげきも かなしかりけり


選字は、「と年二向ひ多る方者常葉木とも
     木暗う森のよう爾て空もあきら
     か耳見えぬもなく佐無可多奈し

   な可むへき空も佐多可二見えぬまて
   し遣起奈希支毛か那し可利介里」

大意は、いつも私が向いている方には、常緑樹などが繁り暗く、森のようで空もはっきりと見えないのは、気が晴れない。
歌意は、外を眺めても、うっそうとして暗く空もよく見えないのは、絶え間なく辛いことです。

一年中、葉を落とさない常緑樹の松は、古来から長寿などを象徴して尊ばれてきましたが、お部屋の前に多数あるとまた別のことでしょう。
 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社