思いもしなかった所で言い寄られて(6)建礼門院右京大夫集を書く

6.あなただけですよ

建礼門院右京大夫集 祥香書

予想だにしなかった隆信に思われて、つれない歌を返したら、再び歌を返してきました。
その歌が
    「君にのみ わきて心の よる波は
     あまの磯屋に 立ちもとまらず


選字は、「支み爾の見わきてこヽ楼乃よ流
     難三盤阿まのい處や爾多遅
     毛登ま羅春」

歌意は、あなただけに心をよせているのです。尼僧の家に立ち止まったりしませんよ。
もちろん、「尼」と「海人」をかけていて、磯屋は海の近くにある漁夫などの家です。

その前の歌で、作者が私ではなく尼さんのところへ行ったんでしょう、と詠んだものですから、こうして返してきた歌がなれなれしく感じます。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社