大河が浮き草を浮かべて(1)酒徳頌を董其昌が書く
1.万物が乱れるさま
大人先生のありようが語られます。
「俯観萬
物擾々」
読み下し文は、「俯して萬物の擾々たるを観ること」
「俯観」:見下ろしてみる。
「擾々」:さわぎ乱れるさま。
現代語にすると、「うつむいて、万物の乱れる様を見ても」*①
ここでは、一行目の「萬」が特徴的です。現代では「万」と書かれる字です。「萬」は変体かなの「ま」としても用いられますので、親しみがあるでしょう。
終画を大きく張り出して下へ払っておおらかです。空間に働きかけて見せ場となっています。とりわけ縦画から筆を扱くように開いてから、直筆に戻してさらに圧を加えるところは変化に富み抑揚があります。
出典:*① 監視と名蹟 鷲野正明 二玄社