再び始まる自伝的物語(2)建礼門院右京大夫集から

2.女房に言い寄る方

建礼門院右京大夫集  祥香書

建礼門院右京大夫は、中宮の代理として和歌を詠むことばかりでなく、女房に代わって詠むこともありました。そのあたりのお話です。

 「中宮の御方さぶらふ人を、公衡の中将のせちにいひし頃、
  物をのみ思ふよしかへすがへす愁へられしに、秋のはじめ
  つかはしける。」

「公衡の中将」は、大炊御門右大臣藤原公能の四男、母は俊成の妹です。*①

大意は、中宮にお仕えしていた女房に公衡の中将がしきりに言い寄っていました。女房殿が、建礼門院右京大夫に何度も嘆き訴えるので、秋の初めに次の歌を送りました。

 *出典:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社