俊成卿女家集を本科と一緒に楽しむ(4)-三十九番-

4.源氏物語須磨にて
「さみだれて浪寄せまさる・・・」の歌の
参考歌は「須磨の浦に心を寄せし舟人のやがて朽たせる袖を見せばや」

源氏物語須磨巻には須磨の前で五月雨の季節を過ごした光源氏の暗澹たる心が詠まれている。

「須磨の浦」から想起する過去の在原業平の悲嘆、そこから作られた虚構の源氏物語での光源氏の哀切が入り混じっている。
「須磨の浦」とは、単なる地名ではなく、「都を追われた高貴な者の涙が、海の波や塩と混ざり合う、この世で最も哀しく美しい場所」という、千年にわたり磨かれ続けた日本の伝統的な公のイメージだった。

この「須磨の浦」の系譜は、後に能楽の『須磨源氏』や『松風』(行平を慕う海人姉妹の霊の物語)へとさらに引き継がれていく。

参考文献:平安鎌倉私家集 久松潜一校注 岩波書店