王羲之書法と中国書の源(6)集字聖教序から

6.書法の改新
王羲之の手紙の中から、後人が集めたものされる『自論書』(張彦遠『法書要録』所収)の中で、王羲之の書の考えが表れている部分がある。

「意転深、点画之間、皆有意、自有言所不尽。」
人のことばとなる前のおもいは、いよいよ深く、点画にも皆それがある。もとより言葉では表現し尽くせないところがある。

人には言葉として外に表出される前のおもいが、まずある。これまでは天の声を書き留める手段であった漢字を、自らの感情を盛り込んで書くという点が革新的といえる。

「是」軽やかな上部に対して、下部の筆をひらく右払いはのびやかで清々しい。

参考文献:書の語られ方 松村茂樹著 日本経済評論社
集字聖教序 天石東村編 二玄社