王羲之書法と中国書の源(5)集字聖教序から

5.中国の正鋒と日本の王羲之
中国では、筆を直角に当てて書く正鋒が正統であり、王羲之のように変化をつける偏鋒は正統とはされなかった。

だが、日本では王羲之書法を継承してきた。王羲之の筆跡を集めたとされる『千字文』は漢字伝来時に日本にもたらされた。

「物」では連続した虚画が字形に大きい変化を与えていることに留意する。偏の下部を小さくして均衡を保っている。旁の中の余白にも趣がある。

筆を立てて鋒先をよく利かせ、抑揚をつけた線が変化に富んでいる。

参考文献:書の語られ方 中国篇 松村茂樹著 日本経済評論社
集字聖教序 天石東村編 二玄社