後鳥羽帝付き女房として再び出仕し(5)建礼門院右京大夫集から

5.かげのない月を

釈文:「月のくまなきをながめて、おぼえぬこともなくかきくらさるる。」

選字は「月の久ま那支を奈 か免て於本えぬこともな久駕支具らさ流ヽ」

鑑賞:「くまなき」は「隈無し」、隠れるところがない。『源氏物語』(夕顔)に「八月十五夜、隈無き月かげ」がある。

大意は「かげのない月をじっと眺めて、すべてが思い出されて、つい目の前が真っ暗になる。」

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社