西行筆と伝えられる山家心中集は(3)臨書して

3.本当の筆者は

伝西行筆 山家心中集 祥香臨

本文の上、欄外にはその歌が勅撰集に入集していることを示す書き付けがある。上記の部分では、一句目に「千」四句目にも「千」、五句目には「新」の文字がある。

これは、「千」『千載集』、「新」『新古今集』であり、この筆跡は藤原定家(1162〜1241)であることがわかっている。他にここにはないが「勅」『新勅撰集』も定家、「続」『続後撰集』は為家(1198〜1275)とみられる。

また、本文中には俊成の娘、坊門局の「唯心房集」と同筆の筆跡が見られる。このことから、俊成に側近の子女三人が分担して書写したものと推定される。(小松茂美博士『古筆学大成』20「山家心中集」)

参考文献:山家心中集 伝西行 高橋裕次解説 二玄社