西行の一品経和歌懐紙を臨書して(5)その澄んだ線は

5.わたつうみの

国宝 一品経和歌懐紙 西行筆 祥香臨

釈文:「わたつうみの ふかきちかひにたのみあれば
    かのきしべにも わたらざらめや」

本作の用字は「わ多つうみ能布可支ち可ひ爾多の
       見あ連は可能きしへ爾も
       わ多ら佐ら免邪」

鑑賞:「わたつうみ」は「わたつみ」の転か。「わたつみ」
   はワダツミともいい、ツは助詞「の」と同じ、ミは
   神霊の意。

   「かのきしべ」は仏教の彼岸をさし、川の向こう岸。
   すなわち生死の海を渡って到達する悟りの世界、と解
   できる。

 参考文献:日本の書 名児耶明監修 平凡社