波の底に住んでいるという風説が(2)建礼門院右京大夫集から

2.空は水平線と

建礼門院右京大夫集 祥香書

釈文:「空はあなたの端にひとつにて、雲路に漕ぎ消ゆる小舟
    のよそめに波風の荒く、なつかしからぬけしきにて」

選字は、「楚らはあ奈多能者堂に日とつ爾傳
     雲路爾漕支き遊流小舟のよ所免爾
     波風農あら供奈つ可しからぬ希志支
     耳て」

大意は、「空は水平線の果てと一続きになり、雲の中に漕ぎ消え
     る小舟のはたから見ても波風が荒く、好ましくない様
     子であって」

鑑賞:「雲路」は月や鳥が通る雲の中の道。
 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社