世の中の騒ぎは夢とも幻とも(3)建礼門院右京大夫集を書きながら

3.皆おろおろするばかりで

建礼門院右京大夫集 祥香書

「まことのきはは、我も人も、かねていつとも知る人なかりしかば、ただいはむ
 かたなき夢とのみぞ、近くも遠くも、見聞く人みなまよはれし。」

選字は、「ま故と
     能支盤ヽ我も人裳か年てい徒とも
     し流日登な可里事か者多ヽい者

     無か多奈機遊免との美處地可九毛
     遠久裳見き具人み奈ま夜者れ志」

現代語にすると、「本当に都落ちする時は、私もあの人も、いつとは前もって知らなかったので、ただ言いようがない悲しい夢を見ているようで近しい人も遠くにい
た人も皆おろおろするばかりでした。」

源義仲が北陸道を攻め上り、都から平家一門を追いやったことが、突然の出来事だ
ったことが、実際に遭遇した作者の目からも推察されます。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社