逢坂の関を越えて(4)建礼門院右京大夫集を書いて
4.あなたが帰ってから
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隆信に正妻が決まるという噂を聞き、枕に思いを託した作者に隆信からの返歌です。
「『かへりてのちみつけたりける』とて、やがてあれより、
心にも 袖にもとまる うつり香を
枕にのみや 契りおくべき」
選字は、「こヽ楼爾も處てに毛とま流うつる香
を枕耳乃美や遅記里お久遍き」
意味は、あなたが帰ってからみつけました、とすぐに隆信から
「心にも袖にもあなたの香りはとどまっていますのに、枕にだけ忘れないでと約束させるだけですか。」
鑑賞:「心にも」と「袖にも」とたたみかける表現に、選字では異なる文字を使いましたので、変化と動きを感じてください。二行目では、「枕」を大きめに書き強調しています。隆信からの情愛も感じられる返し歌です。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社