亡き方をしのぶ(1)建礼門院右京大夫集

1.涙と時雨が

建礼門院右京大夫集 祥香書

建礼門院右京大夫が詠んだ歌へお返しの歌です。

釈文:「かへし
    おとづるる しぐれは袖にあらそひて
    なくなくあかす 夜半ぞかなしき


選字は、「か遍し
   於とつ流ヽ志久礼者處弖爾
   あ羅曽ひて難具ヽヽ阿可春
   夜半そか那しき」

歌意は、私の袖には、時雨と涙があらそって落ち、泣きながら夜半を過ごすのは辛うございます。

この歌も『源氏物語』葵が意識されているようです。
涙と時雨が先を争って落涙するという、どこか絵画的な描写に思えます。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社