涙の露ぞ(1)建礼門院右京大夫集

1.葉におく露は

建礼門院右京大夫集 祥香書

釈文は「ゆかりある人の、かぜのおこりたるをとぶらひたりし返しに、
     なさけなく 言の葉ごとに 身にしみて
     涙の露ぞ いとどこぼるる


選字は、「遊可利あふ人のかせ乃於こり多流
     を登婦ら日た利し返志爾

  な佐希お久ことの葉こ登二
  美爾し三轉なみ多の徒ゆ處
  い度こヽほるヽ

大意は、縁故の人が、風邪を見舞ってくれたお返しに
葉におく露が風にこぼれるように、情愛のこもったお言葉ごとに、身に染みて嬉しく、さらに涙があふれます。

「露」の縁語として「おく」「葉」「こぼる」が詠まれています。

風邪をひいたことを、縁語を重ねて機知に富んだ歌を詠みました。
 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社