秋の虫の音も愁いを帯びて(5)建礼門院右京大夫集

5.夕暮れの空も

建礼門院右京大夫集  祥香書

秋の夕暮れの空は、はっきりしなくて、どんよりとしている。つい、あの人の心の内みたいね、と思う作者です。

 「物思へ なげけとなれる ながめかな
  たのめぬ 秋のゆふぐれの空」

用字は、「毛能於裳へ奈希ゝと那連る
     なか免可奈堂農め努あ記の
     遊布久れのそ羅」

秋は夕暮れの訪れが早いのに、思う人は待ってもこない、あてにならない人を待つ身は、夕暮れの空と同じね。深まる嘆きに如何ともしがたい作者の心情が表れています。
  参考文献:建礼門院右京大夫集 新潮社