恋にも様々あり題詠歌(5)建礼門院右京大夫

5.名前を変えて逢う恋

建礼門院右京大夫集  祥香書

「変名を用いて恋人に逢ふ恋」とは、穏やかならぬ事情がありようで、物語が始まりそうですね。

 「いとはれし うき名をさらにあらためて
  あひみるしもぞ つらさそひける」

選字は、「いとは連しうきな越さらに
     あら堂免て阿日みるし毛
     所川らさそ比遣る」

歌意は、「以前嫌われた、この名を新たに変えて、恋人に逢っているが、私の名がいかに嫌われているかわかって、やりきれなさが募ることだ。」

『源氏物語』浮舟の巻で、別名で近づく男の話が見られます。*①

当時は、恋人同士でも、あまり顔を合わせる機会が少なかったために、詠われたのでしょう。