夏野の草や、水鶏よ(1)建礼門院右京大夫集

1.野中のあずまやの

建礼門院右京大夫集  祥香書

題は、「野亭夕の草」で野中のあずまやの夕方の意味です。

 「夕されば 夏野の草の かたなびき
  あらためて すずみがてらに やすむ旅人」

選字を「ゆ布佐連八夏野の草乃可たな
    飛き寸ゝみか弖らにや春无多日
    ひ登」

暦の上では、すでに秋ですが、まだ暑話の残る日暮れの光景にふさわいしい歌です。
意味は、夕方になると、夏野の草がたなびいて、涼みがてらに旅人が休んでいます、というものです。徒歩が多かった旅人にとって涼風は代えがたいものだったのでしょう。

 *出典:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社